こんにちは。文様研究室 シニア研究員のヒゲモンです。
「鬼滅の刃」大ヒットは昨年の社会現象にまでなりましたね。誰も彼も緑と黒の格子をまとったり、ちくわを咥えてポーズを取ったりしていました。
その中でも一番有名になったビジュアルは言わずもがな。緑と黒の格子柄です。同作品とコラボした商品が緑と黒の格子をまとったとたん、桁違いに売れたそうです。キャラクターも配して正式にコラボした商品なら問題ありませんが、勝手に緑と黒の格子柄をまとった非公式の商品もちまたに溢れてしまいました。もう区別つきません。
令和2年6月、「鬼滅の刃」の版元の集英社が商標権の登録申請をしました。
(商標出願2020-078058)
ロゴやキャラクターのデザインではなく、緑と黒の格子柄です。
誰が見ても歴史ある市松文様の申請は却下されるだろうと思われていましたが、集英社側は登録申請することで、不正競争防止法の観点から、一定の排除効力を示せると踏んだのだと思います。
令和3年5月26日 やはりというか当然というか「拒絶理由通知書」が掲示されました。一部抜粋して記載します。
“いわゆる「市松模様」の一種と理解されるものですから、全体として、装飾的な地模様として認識されるにとどまり、かつ、その構成中に自他商品の識別力を有する部分を見出すこともできません。”
かなり決定的なダメ出しですね。まあ、当然といえば至極当然。
これに対して令和3年7月6日付けで、集英社側から意見書が提出されています。「ただの市松模様ではないのだ」という思いが、強烈な文章と論理で展開されています。また同様の商標登録された実績も示し、これがOKなのに「なぜ、今回だめなんだ!」と周囲を埋め立てるような論理です。
もしかすると集英社の思いが特許庁を突き動かし、不当な緑と黒の鞄やマスクは無くなるかもしれません。意見書に対する特許庁審査官の再通知が楽しみです。
市松文様はもともと石畳文様と言われていました。江戸時代に歌舞伎役者の佐野川市松が、グレーに白のなんともモダンな石畳文様をしつらえ、その大人気によって大流行したそうです。
それ以降「市松文様」となり、元の名称で呼ばれなくなりました。
今回の大ヒット作品「鬼滅の刃」では主人公が緑と黒の市松文様をまとい、市松文様といえば、緑と黒をイメージするようになってしまいました。もしかすると令和以降は、市松文様でなく「鬼滅文様」と呼ばれるように変化するかもしれません。
関連リンク
- 特許情報プラットフォーム
- 特許情報プラットフォーム:商標公開 2020-078058
(078058~078063までの6点)
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